新型コロナウイルス感染症に関連した雇用保険の特例
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大を背景に、家族の介護や子どもの世話のために退職せざるをえなくなったり、また、雇止めや解雇された労働者が多く発生しています。今回はこのような離職者が受けることのできる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)に関する特例をとり上げます。
[1]給付制限が行われない措置
失業手当は、離職理由により一定期間、給付を受けることのできない給付制限の期間が設けられています。ただし、特定受給資格者(倒産や解雇等が理由の離職者)や、特定理由離職者(一定の雇止め、転居や婚姻等による自己都合退職等が理由の離職者)は、この給付制限の期間が設けられていません。
今回、新型コロナの影響として、2020年2月25日以降に、以下の理由により離職した人は特定理由離職者として扱うことにより、給付制限の期間が設けられないこととなっています。
- 同居の家族が新型コロナに感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナの影響で子(小学校、義務教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
[2]給付日数の延長
新型コロナにより、経済状況は急激に悪化し、求人倍率も大幅に減少しています。そのため、離職者の求職活動の長期化等が予想されることから、失業手当の受給者について、給付日数が延長されることになりました。
対象となる離職者は、2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人で、下表の通りとなっています。※画像はクリックで拡大されます。
延長される日数は原則60日ですが、35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人および45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人は30日となります。所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合等、対象とならないこともあります。
これらの他、新型コロナにより求職活動ができない場合やハローワークに出向いて失業の認定が受けられない場合の特例も設けられています。新型コロナの影響で離職する従業員に対して、特例が設けられていることを伝えるとよいでしょう。
■参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスの影響により自己都合離職された方は、正当な理由のある自己都合離職として給付制限を適用しないこととしました。」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000632360.pdf
東京労働局「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_00583.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。