高年齢労働者が安心・安全に働ける職場環境づくりとその支援のための補助金
労働災害による休業4日以上の死傷者数のうち、60歳以上の労働者の占める割合は増加傾向にあり、2018年は26.1%となっています。また今後、70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境を作っていくことは重要な課題であり、国は企業や労働者に取組が求められる事項をまとめ、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」として公表しました。そこで今回は、エイジフレンドリーガイドラインの内容とそれを支援する補助金をとり上げます。
[1] エイジフレンドリーガイドライン
エイジフレンドリーガイドラインには、企業に求められる事項として、以下の5つが挙げられています。
- 安全衛生管理体制の確立等
- 職場環境の改善
- 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
- 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
- 安全衛生教育
このうち3.は、企業・高年齢労働者双方がその高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握し、企業はその体力にあった作業に従事させ、高年齢労働者自らの身体機能の維持向上に取り組めるように、主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいとされています。具体的な体力チェックの方法として、以下のものが考えられます。
- 従業員の気づきを促すため、加齢による心身の衰えのチェック項目等を導入すること
- 厚生労働省が作成した「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用すること
- 事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施すること
そして4.は、健康や体力の状況を踏まえて必要に応じた措置を講じることが必要とされています。脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に高まるため、基礎疾患の罹患状況を踏まえて、労働時間の短縮や深夜業の回数の制限、作業の転換等の措置を講じることが必要です。
[2]エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリーガイドラインに関連して創設されたエイジフレンドリー補助金は高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用している中小企業が対象となり、高年齢労働者が安心して安全に働けるように職場環境の改善にかかった費用の一部を補助するものです。補助対象は以下の対策に要した費用になります。
- 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- 働く高齢者の健康や体力の状況の把握等
- 安全衛生教育
- その他、働く高齢者のための職場環境の改善対策
また、新型コロナウイルスの感染防止を図りつつ高齢者が安心して働くことができるよう、利用者や同僚との接触を減らす対策も補助対象となります。補助金額は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費の2分の1で、上限額は100万円です。申請期間は2020年10月31日までとなっており、申請先はエイジフレンドリー補助金事務センターになります。
補助金については、予算があるため、申請期間中であっても受付が締切となる可能性があります。活用を検討される場合は、早めに補助金の交付申請をしましょう。
■参考リンク 厚生労働省「「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表します」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10178.html 厚生労働省「令和2年度エイジフレンドリー補助金について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09940.html 一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会 エイジフレンドリー補助金事務センターhttps://www.jashcon-age.or.jp/
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。