新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が雇用に影響を与えています。厚生労働省ではその影響をタイムリーに把握し、ホームページで情報を発信しています。そこで、今回はその状況と勘違いしやすい解雇と雇止めの違いをとり上げましょう。

 

[1] 雇用調整の可能性がある事業所数・解雇等見込み労働者数
2020年10月30日時点の累計値によると、感染症に起因する雇用調整の可能性がある事業所数は112,533事業所、解雇等見込み労働者数は69,130人となっています。これらについて上位5業種をみると以下のようになっています。

【雇用調整の可能性がある事業所】
・製造業 20,703事業所
・飲食業 13,414事業所
・小売業 11,290事業所
・サービス業 10,033事業所
・建設業 7,218事業所

【解雇等見込み労働者】
・製造業 12,979人
・飲食業 10,445人
・小売業 9,378人
・宿泊業 8,614人
・労働者派遣業 4,944人

この情報は都道府県労働局等で把握できた範囲のものであり、必ずしも網羅性のあるものではありません。また、過去に把握した情報の一部には既に再就職をした人も含まれている可能性があります。そのため実際の雇用環境はさらに悪化していることが考えられ、今後の新型コロナ感染拡大の状況によっては解雇等見込み労働者数が増えることが懸念されます。

 

[2] 解雇・雇止めの違い
解雇等見込み労働者とは、解雇や雇止め等の予定がある労働者(一部すでに解雇や雇止めされたものも含む)を指しています。解雇と雇止めは混同されやすいですが、解雇や雇止めを行うときの手続きや、雇用保険の基本手当の扱いにおいて異なることもあり、区別して理解しておく必要があります。

  1. 解雇
    会社が一方的に労働契約を解消することをいいます。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効となります(労働契約法16条)。また、有期労働契約は、やむを得ない事由がなければ契約期間中に解雇することができないとされており(同17条)、無期労働契約を締結している場合の解雇よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。
  2. 雇止め
    雇止めとは有期労働契約で、その契約を更新せず、労働契約を終了することをいいます。有期労働契約であっても、無期労働契約と実質的に異ならない状態になっている場合や、反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合には、雇止めが認められないことがあります。

有期労働契約の更新時のトラブルを防止するために、労働契約の締結時に書面で更新の基準を示す必要があります。そして、更新に関して「更新する場合がありうる」とした場合には、「契約期間満了時の業務量」「労働者の勤務成績、態度」のように、その判断の基準を具体的に示すことも必要です。書面の内容を確認し、記載が漏れている場合は追記しましょう。

■参考リンク 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouseisaku1.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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