2020.11.18
2019年度の労基署による不払い残業代の是正指導 約98億円
[1]是正企業数等の概況
- 是正企業数:1,611企業(前年度比157企業の減)
- 対象労働者数:78,717人(同39,963人の減)
- 支払われた割増賃金の合計額:98億4,068万円(同26億815万円の減)
- 支払われた割増賃金の平均額:1企業当たり611万円、労働者1人当たり13万円
※是正企業のうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは161企業(前年度比67企業の減)
今回、是正企業数、対象労働者数、支払われた割増賃金の合計額は前年よりも大幅に減少しています。
[2] 労働基準監督署の監督指導事例
監督指導の対象となった企業では、タイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか定期的に確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組みが行われています。公表された資料の中では、賃金不払残業の解消のための取組事例が4つ紹介されており、特に以下の固定残業代制度の不適切な運用の事例は、固定残業制代制度を導入している企業は確認をしておきたい内容となっています。
- [賃金不払残業の状況]
- 「労働時間がまったく把握されておらず、残業代が一切支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
- 労働者に対し、月10時間から42時間相当の残業手当を定額で支払っていたが、実際の労働時間を全く把握しておらず、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
- [企業が実施した解消策]
- パソコンの送信メールのログ記録や労働者からのヒアリングなどを基に実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
- 賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
- 「労働時間適正把握ガイドライン」に基づく労働時間の考え方について資料を作成し、管理者を含めたすべての労働者に周知するとともに、社内のイントラネット上で、いつでも閲覧できるようにした。
- パソコンのオン/オフ時の時刻を自動で記録する勤怠管理システムを導入し、客観的な記録を基礎として労働時間を把握することとした。
- 管理者が、労働者がパソコンをオフ後に仕事を行っていないかなど、勤怠管理システムによる労働時間の管理が適正に行われているかについて日常的に確認し、問題が認められた場合には、労働者本人とその上司に対して指導を行うこととした。
固定残業代制度を導入していたとしても、そもそも企業は労働時間を把握する義務が課されており、固定残業代に含まれる時間数を超えた場合、別途残業代の支払いが必要となります。適切な運用ができていない場合は、早急に対応しましょう。
■参考リンク 厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成31年度・令和元年度)」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/chingin-c_r01.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。