定年退職者の再雇用時や再雇用後の有期労働契約の更新時に、労働条件の見直しを行うという会社もあるでしょう。
今回は、その際の社会保険料負担を軽減できる「同日得喪」の手続きをとり上げます。

 

1.同日得喪の仕組み
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の標準報酬月額は、被保険者資格の取得時に決定された後は、定時決定または随時改定(産前産後休業・育児休業復帰後の随時改定を含む)のタイミングでその見直しが行われます。ただし、60歳以降の被保険者が定年退職等をし、その後再雇用されたときには、定時決定や随時改定を待たず、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に変更できる仕組みがあります。
具体的には、退職後、継続再雇用したタイミングで、一旦、雇用関係が終了したものとして扱い、定年退職等の日の翌日において被保険者資格を喪失し、同日に被保険者資格を取得することにより、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に変更されます。
資格喪失日と資格取得日が同じ日になることから一般的に「同日得喪」と呼ばれています。

 

2.同日得喪の対象者
同日得喪は、60歳以降に退職後継続再雇用となるすべての人が対象となります。退職後継続再雇用とは、定年退職の後、その間に1日も空くことなく同じ会社に再雇用されることを指し、定年のときのみではなく、定年後の有期労働契約を更新する際も対象となります。
定年の定めがないときにも、60歳以後に退職するのであれば、対象となる仕組みです。
また、70歳になると厚生年金保険の資格は喪失をし、健康保険のみの加入となりますが、健康保険のみでも同日得喪を行うことができます。

 

3.手続き時の添付書類
同日得喪の手続きをするときには、一旦、契約が終了し再雇用となることが分かる内容の書類を届出書に添付します。具体的には、「就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類および継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書等の書類」または、「事業主の証明」が添付書類になります。この「事業主の証明」は、特に様式が指定されておらず、退職された日、再雇用された日が記載されているものです。
日本年金機構のホームページでは「継続再雇用に関する証明書」の様式が公開されており、これを利用することもできます。

この同日得喪を行う際の注意点として、社会保険料の負担は軽減されますが、健康保険の傷病手当金の給付額の計算を行うときは、同日得喪後の標準報酬月額に基づき行われます。
給付を受ける段階になり、想定していた給付額よりも少ないということにならないよう、該当者に説明しておきましょう。

 

■参考リンク
日本年金機構「Q. 60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/shokutakusaikoyo/20140911.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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