増える精神障害の労災請求件数 求められるハラスメント対策
メンタルヘルス疾患を発症し、従業員が欠勤したり、休職したりする企業は少なくありません。
また、その原因が仕事による強いストレスとなっていることもあります。
実際に、先日発表された厚生労働省の資料によると、仕事が原因として労災請求をするケースも増えています。以下では発表された資料の内容を確認しておきます。
[1]精神障害の労災補償状況
精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。令和3年度の請求件数は2,346件で、前年の2,051件から295件増加しました。請求件数が増えてきている理由には、精神障害における労災請求の仕組みの認知が進んだことがあると考えられます。
一方で支給決定件数については629件となり、前年の608件から21件の増加に留まりました。ただし、過去最高の件数となっています。支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位3つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業の82件、医療業の59件、道路貨物運送業の47件となっています。認定率については32.2%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
[2]具体的な出来事
支給の決定には具体的にどのような出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、上位項目は以下通りとなっています。
- 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(125件)
- 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(71件)
- 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(66件)
- 特別な出来事(心理的負荷が極度となるもの)(63件)
- 同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(61件)
- セクシュアルハラスメントを受けた(60件)
支給決定件数(629件)のうち、パワーハラスメントやいじめ・嫌がらせ、セクシュアルハラスメントといったハラスメントに関するものが全体の4割を占めていることが特筆すべき点です。
2022年4月1日より、パワーハラスメント防止措置が中小企業でも義務づけられ、すべての企業でハラスメントの防止措置が義務化されました。職場におけるハラスメントの問題は、メンタルヘルス疾患の原因にもなり得ます。そのため、ハラスメント研修を行うことや、相談窓口を設置しハラスメントがあるときには積極的に活用して防止や問題が小さいうちに対応できるよう、ハラスメント防止に向けた積極的な取組みが求められています。
■参考リンク
厚生労働省「令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26394.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。