36協定を遵守するための実務上の注意点
「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を年度単位で締結されている企業が多くあるかと思います。新年度がスタートしていることから、以下では36協定を遵守するための実務上の注意点をとり上げます。
[1]日々のチェックポイント
36協定に定めた内容を遵守するための日々のチェックポイントとして、以下の2点が挙げられます。
- 「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働が、36協定で定めた時間を超えないこと。
- 休日労働の回数・時間が、36協定で定めた回数・時間を超えないこと。
まず1については、「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働の時間数を管理していく必要があり、特に「1年」は、例えば9ヶ月目に年間の時間外労働の上限を超えているといった事態にならないように、起算日からトータルで集計し、管理しましょう。2については、36協定で定めた内容を確認し、その内容の範囲で行う必要があります。
[2]特別条項を適用した場合のチェックポイント
特別条項を適用した場合の36協定に定めた内容を遵守するためのチェックポイントとして、以下の3点が挙げられます。
- 36協定に記載した限度時間を超えて労働をさせる場合における手続に基づいて、手続きを行っていること。
- 特別条項の回数が36協定で定めた回数を超えないこと。
- 月の時間外労働と休日の合計が、その2~6ヶ月の平均をとって1月当たり80時間を超えないこと。
1については、特別条項に該当する月ごとに36協定に記載した手続きを行う必要があります。例えば、「過半数代表者に対する事前申し入れ」とした場合、会社が従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れることが求められます。
2については、特別条項の回数は最大6回までとされているため、例えば36協定において「6回」と定めた場合、従業員ごとに6回を超えないように管理することが求められます。実務上はこの点がもっとも重要なポイントであると言えるでしょう。
そして、3については、例えば特別条項を1ヶ月90時間と締結しており、当月は90時間の範囲に収まっていたとしても、2~6ヶ月平均で時間外・休日労働を月80時間以内に収めなければならない絶対的な上限の規制が存在します。たとえば当月に90時間の時間外労働があった場合には、その翌月は70時間以内に収めるように業務を調整することが求められます。また、この2~6ヶ月の平均は、36協定の期間にしばられることなく、前後の36協定の期間をまたいだ期間も適用されます。36協定を2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間で締結していたとしても、3ヶ月平均は2023年4月~6月のみならず、2023年3月~5月でも確認する必要があります。
上記のほか、特別条項を適用した従業員に対して、会社は36協定に定めたいわゆる「健康福祉確保措置」を実施し、この実施状況に関する記録を36協定の有効期間中および有効期間の満了後3年間保存する必要があります。対象になったときは必ず実施するとともに、記録を残しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。