長時間労働者に対して求められる労務管理
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、一部の企業においては、需要の急回復による人手不足から長時間労働にならざるを得ないような状況が見られます。
そこで今回は、長時間労働者に対して企業が実施すべき労務管理の内容についてとり上げます。
[1]医師の面接指導
医師の面接指導の対象となる従業員は、法令で時間外・休日労働時間が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者と定められています。時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員が、疲労の蓄積があり、面接の希望を申し出をした場合に、医師の面接指導を受けさせる必要があります。
なお、対象となる従業員は、正社員やパート・アルバイトだけでなく、管理監督者も含まれます。
[2]労働時間に関する情報の通知
面接指導の申出を促す目的から、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員に対して、会社は速やかに超えた時間に関する情報を通知する必要があります。通知は、労働時間に関する情報だけでなく、面接指導の実施方法・時期などの案内も併せて行うことが望まれます。
この通知は、給与明細に時間外・休日労働時間数を記載している場合は、これを労働時間に関する情報の通知としても差し支えありません。また、労働時間の適用除外となっている管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者についてもこの通知の対象となっています。
労働時間の状況の把握は、割増賃金の計算の目的以外の健康管理のためにも、必要かつ重要です。
[3]産業医等に対する必要な情報提供
常時使用する労働者数が50人以上の事業場においては、産業医を選任する義務があります。そして、会社はこの産業医に対して、従業員の健康管理等に必要な情報を提供する義務があり、この必要な情報のひとつとして「時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員の氏名」と、「その従業員の超えた時間に関する情報」があります。
また、月80時間を超えた従業員がいなかった場合も、該当者がいなかった旨の情報を産業医に情報提供する必要があります。情報提供の漏れがないように、連絡する定例日を決めるなどして、確実に実施していきましょう。
医師の面接指導については、時間外・休日労働時間が月80時間を超えると、従業員からの申出に関わらず実施しているケースや、月80時間の時間数を月60時間などに引き下げて実施しているケースなどがあります。健康障害の防止のためには、このように会社独自の基準を設けて、過重労働対策を行うことを効果的です。
※高度プロフェッショナル制度対象の従業員、研究開発業務従事者については、取り扱いが異なる場合があります。
■参考リンク
厚生労働省
「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。