2023年6月13日、大きな話題となっていた「こども未来戦略方針」(以下、「方針」という)が閣議決定され、正式な内容が公表されました。今後、この方針に沿った法改正等が進められることから、方針の中で触れられている社会保険に関連した内容をとり上げます。

 

[1]社会保険の2つの壁
従業員が加入する社会保険(健康保険・厚生年金保険)には、それぞれ加入基準が定められており、その基準を満たすことで、従業員自身が被保険者となり、会社とともに保険料を負担します。この保険料負担に関しては以下の2つの壁が存在しています。

  1. 106万円の壁
     厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業(特定適用事業所)では、以下の3つの基準をすべて満たすことで、社会保険に加入し、保険料を負担することになっています。

    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 所定内賃金が月額8.8万円以上
    • 学生でない

     106万円とは、月額8.8万円を年間に換算した額であり、この壁を超える(年収が106万円以上となる)ことで、保険料の負担が発生することを示しています。

  2. 130万円の壁
     健康保険の被扶養者および国民年金の第3号被保険者として認定される要件の1つに、「年収が130万円未満であること」があります。被扶養者(第3号被保険者)は、健康保険料や国民年金保険料を直接負担する必要がありません。
     この壁を超える(年収が130万円以上となる)ことで、国民健康保険の被保険者や、国民年金の第1号被保険者となり、保険料の負担が生じることを示しています。

 

[2]社会保険の適用拡大
 106万円・130万円の壁があることで、これらの年収以上とならないように労働時間や賃金額を抑制する従業員が一定数存在しています。方針では、「いわゆる106万円・130万円の壁を意識せずに働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引上げに取り組む」としています。そして、それにより男女ともにキャリアを築き、男女ともに育児を行うこと等を促進しようとしています。

 

[3]雇用保険の適用拡大
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上であることが加入基準の一つとされており、加入し、支給要件を満たすことで失業等給付や育児休業給付等を受給することができます。
方針では、雇用保険の加入基準を拡大し、週の所定労働時間が20時間未満の従業員にも失業等給付や育児休業給付等を受給できるようにするとしています。
なお、拡大する範囲は「制度に関わる者の手続や保険料負担も踏まえて設定する」としており、施行時期は適用対象者数や事業主の準備期間等を勘案して2028年度までを目途としています。

上記[2]に関しては、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせないための当面の対応が検討されており、今年中に実行するとしています。今後の動きにも注目しましょう。

 

■参考リンク
内閣官房「こども未来戦略方針

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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