厚生労働省では、毎年、労働基準監督年報を発行しており、労働基準監督署等による様々な活動実績を見ることができます。
今回は、令和4年版の労働基準監督年報の中から、多くの方の関心が高いと思われる「定期監督等」の違反状況とその注意点をとり上げます。

 

[1]定期監督等における違反の上位10項目
労働基準監督官が企業に訪問するような調査(監督)は、年間171,528件行われており、そのうち、毎月一定の計画に基づいて実施される「定期監督等」が142,611件(全体の83.1%)、労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」が16,639件、(全体の9.7%)、再監督が12,278件(全体の7.2%)となっています。このように見ると大半が「定期監督等」であることが分かります。
そして、この「定期監督等」における違反状況について、件数の多いものからみてみると、以下のようになっています。このように健康診断や安全基準など、労働安全衛生に関する違反の指摘が多くなされており、労働時間や割増賃金が続いています。

 

  項目 令和4年 令和3年
1 健康診断(労働安全衛生法66条~66条の6) 29,974件 22,139件
2 安全基準(労働安全衛生法20~25条) 27,041件 23,823件
3 労働時間(労働基準法32条) 22,305件 18,007件
4 割増賃金(労働基準法37条) 20,554件 16,521件
5 年次有給休暇(労働基準法39条) 14,264件 9,783件
6 労働条件の明示(労働基準法15条) 13,853件 10,025件
7 賃金台帳(労働基準法108条) 12,254件 10,030件
8 年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条の7条) 11,264件 7,370件
9 就業規則(労働基準法89条) 9,546件 9,148件
10 時間把握(労働安全衛生66条の8の3) 8,837件 6,414件

 

[2]2024年4月以降に注意したい「労働条件の明示」に関する違反
2024年4月より、労働条件の明示ルールが変わり、明示事項が追加されます。これにより、来年度以降の労働基準監督署の調査において、この確認が行われることが考えられます。2024年4月1日以降に締結するものより対応が必要になりますので、まだ準備していない場合は早めに対応しましょう。

労働条件の明示以外の項目についても、法令の条文に立ち返って問題がないか確認し、労働基準監督署から指摘を受けないようにすることが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働基準監督年報

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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