今後注目が高まる仕事と介護の両立における課題
異次元の少子化対策として、仕事と育児の両立に注目が寄せられていますが、一方で高齢化や高齢者雇用の増加に伴う仕事と介護の両立も、企業が取り組むべき重要課題となっています。
そんな中、経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する従業員(ビジネスケアラー)を取り巻く課題への対応として、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しました。以下では、この背景とポイントをとり上げます。
[1]ガイドライン策定の背景
ビジネスケアラーの数は現在増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円という試算が出されています。このような労働損失の影響を抑えることが必要になっています。
企業にとっても、従業員が抱える介護の問題は、従業員本人のパフォーマンスの低下や介護離職などに繋がり、結果として、事業活動の継続にも大きなリスクを生じさせることになります。そのため、企業としての取り組みを進めるべき重要な時期に来ています。
[2]ガイドラインのポイント
ガイドラインでは、経営者層を対象に、企業が取り組むべき事項を以下の3つのステップで、具体的に示しています。
[STEP1]経営層のコミットメント
仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示す
□経営者自身が知る
「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか?
□経営者からのメッセージ発信
仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか?
□推進体制の整備
担当役員設置/担当者の指名、管理職層の巻き込みができているか?
[STEP2]実態の把握と対応
組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握
□アンケート・聴取
社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか?
□人材戦略の具体化
介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか?
□適切な指標の設定
仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか?
[STEP3]情報発信
企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減
□基礎情報の提供
介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか?
□研修の実施
全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか?
□相談先の明示
社内での相談先・プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか?
このステップに加え、企業の実情やリソースに応じて、人事労務制度の充実、個別相談の充実やコミュニティ形成等、企業独自の取組の充実も求められます。
今国会には、育児・介護休業法の改正法案も提出され、成立すれば、介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の強化が企業に求められることになります。従業員の仕事と介護の両立への具体的対応が今後必要となります。
■参考リンク
経済産業省
「「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。