社会保険の2つの年収の壁
昨年10月の衆議院議員選挙以降、所得税の壁である年収103万円の壁を中心に、「年収の壁」が話題になっています。
この年収の壁は、100万円、103万円、106万円、130万円、150万円および201万円の壁があると言われることが多く、これらのうち、106万円および130万円の壁が社会保険の壁と言われています。そこで今回は、この社会保険に係る年収の壁について解説します。
[1]年収106万円の壁
106万円の壁とは、従業員数(厚生年金保険の被保険者数)51人以上規模の企業で勤務するパートタイマー等が、社会保険(健康保険・厚生年金保険)へ加入する年収額のことです。一般的に年収106万円と表現されますが、正確には年収で判断するのではなく、「月額賃金8.8万円」で判断します。この月額賃金を年収換算したおおよその額が106万円であり、年収の壁として表現されています。
なお、社会保険への加入は、月額賃金以外にも「週の所定労働時間が20時間以上であること」といった要件があるため、月額賃金8.8万円以上となったとしても、週の所定労働時間が20時間未満であれば原則として社会保険には加入しません。
[2]年収130万円の壁
年収130万円は、原則として60歳未満の人が、家族の健康保険の扶養(配偶者の場合には国民年金の第三号被保険者)として認定を受けられる基準の年収額のことです。
年収130万円以上となると、扶養として認定を受けることができないため、国民健康保険に加入し保険料を支払うことになります。また、国民年金の第三号被保険者は第一号被保険者となり、これまで直接支払う必要がなかった国民年金の保険料の支払う必要が出てきます。
[3]年収の壁を超えることの影響
社会保険に係る年収の壁は、壁を超えることにより、社会保険料の新たな負担が発生することになり、本人の手取り額が減ることになります。所得税に係る年収の壁は、この点で大きく異なると言われています。
なお、年収106万円および130万円を考えるときの収入の考え方は下表のとおりであり、同じ「社会保険」や「年収の壁」という表現を用いたとしても、細かな違いがあることにも注意が必要です。
表 年収106万円、130万円の壁の対象となる収入(〇:対象 ―:対象外)
基本給 諸手当 |
家族手当 通勤手当 など |
時間外手当 休日手当 など |
賞与 など |
不動産収入 事業収入 配当収入 など |
|
106万円の壁 | 〇 | ― | ― | ― | ― |
130万円の壁 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
社会保険の加入要件の見直しについては、今年の通常国会に改正法案が提出される見込みです。その内容は、今後、改めて確認したいと思います。
■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。