新型コロナウイルス感染症の影響により、飲食店等で一時的に店舗を閉めるなどして、所定労働日に従業員を休業させるケースが出てきています。会社都合で従業員を休ませる場合には、労働基準法の定めに基づき、従業員に対して休業手当を支払う義務があります。またこれは正規従業員だけでなく、パートタイマーなどの非正規従業員も対象になります。そこで今回は、この休業手当を計算する際の注意点をとり上げます。

 

1.原則となる計算方法
休業手当は、平均賃金の100分の60以上の額と規定されていますが、その計算は原則として平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に、その従業員に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦の日数)で除することで行います。なお、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日からさかのぼって3ヶ月間で計算します。
例えば賃金締切日が15日で、2020年4月30日に休業させる場合には、3月16日~4月15日、2月16日~3月15日、1月16日~2月15日の3ヶ月間の賃金総額を出し、これをその期間の総日数(91日)で除することで平均賃金を計算します。
具体例は以下のとおりで、銭未満の端数は切り捨てることが認められています。※画像はクリックで拡大されます。

 
これにより、休業手当については、この平均賃金の額(7,252円74銭)に60%を乗じた額の4,351円64銭以上の金額の支払いが求められます。なお、円未満の端数は、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることが認められているため、1日の休業であれば4,352円以上の金額を支払うことになります。

 

2.最低保障
パートタイマー等は時間給制であることが多いことから、平均賃金を計算する際には、1.のほか、最低保障額の計算も求められます。これは時間給制に限らず、賃金の一部または全部が時間給制や日給制、出来高給制の場合が該当します。
最低保障額は、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に、その従業員に対し支払われた賃金の総額を、その期間の労働日数で除した金額の60%とされています。なお、1.により計算した金額が、この最低保障を上回る場合は、1.が平均賃金となります。
具体例は以下のとおりです。※画像はクリックで拡大されます。

 

 
この場合、(1)と(2)を比較すると(2)の方が高いため、平均賃金は4,680円となります。そして、休業手当は平均賃金に60%を乗じた2,808円以上になります。

入社したばかりで1ヶ月分の賃金が支払われていないなど、特殊な事案もあるかと思います。このような場合には、当事務所までお問い合わせいただくか、所轄労働基準監督署に相談の上、対応しましょう。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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