従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症した際、長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかったことが原因だとして、労災請求が行われる場合があります。これに関連し、2019年度の労災請求状況に関する集計結果が先日、厚生労働省より発表されました。そこで今回は、精神障害の労災補償状況についてとり上げましょう。

[1]精神障害の労災補償状況

2019年度の精神障害の労災請求件数は2,060件となり、前年の1,820件から240件増加し、統計調査を取り始めてから過去最高となりました(下図参照)。支給決定件数は509件で、認定率は32.1%となっています。※図はクリックで拡大されます

精神障害の集計では、精神障害が発症した理由と考えられる具体的な出来事が分類されていますが、支給決定件数における上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。

  1. (ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた 79件
  2. 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった 68件
  3. 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 55件
  4. 2週間以上にわたって連続勤務を行った 42件
  5. セクシュアルハラスメントを受けた 42件


[2]心理的負荷評価表に追加されたパワーハラスメント

2020年6月より、パワーハラスメント対策が大企業で義務化されましたが、これに併せて精神障害の労災認定基準に用いる「業務による心理的負荷評価表」が改定されました。
具体的には、出来事の類型に「パワーハラスメント」が追加され、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が具体的出来事に追加されました。また、今回の1位「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の項目について、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」と文言が修正されました。
特に、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の具体例として、心理的負荷の強度を「強」と判断するものとして、上司等による以下のような精神的攻撃が執拗に行われた場合が挙げられています。

  • 人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
  • 必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

 パワーハラスメントの防止対策として研修を行う際には、上記を参考にどのような言動がパワーハラスメントに該当するのかを具体的に伝え、注意喚起をしましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和元年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11975.html
厚生労働省「精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を明示します」
https://www.mhlw.go.jp/content/000637468.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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