従業員を所定労働日に休業させ、その理由が会社の責に帰すべきものであったときには、会社は従業員に休業手当を支給しなければなりません。新型コロナウイルス感染症およびそのまん延防止措置の影響により多くの企業が休業をしていますが、休業手当を支給されなかった従業員が発生したことに伴い、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「新型コロナ支援金」という)の制度が設けられました。そこで、今回はこの新型コロナ支援金をとり上げます。

 

[1]新型コロナ支援金の概要と申請
 新型コロナ支援金は、2020年4月1日から9月30日までの間に会社の指示により休業したにも関わらず、その休業に対する休業手当が支給されなかった中小企業の従業員に、休業する前の賃金の8割(1日あたりの上限11,000円)が、休業した日数に応じて国から直接支給されるものです。
 初回の申請は「支給申請書」および「支給要件確認書」に、以下の3点を添付して指定先へ郵送します。

  1. 申請者本人であることが確認できる書類として運転免許証等のコピー
  2. 振込先口座を確認できる書類の写しとして通帳等のコピー
  3. 休業前および休業中の賃金額が確認できる書類の写しとして給与明細等のコピー

 申請は従業員が行う方法と、会社経由で行う方法がありますが、いずれも申請する従業員の休業に関する事項を会社が証明する必要があります。会社がこの証明を行わず従業員が申請したときは、後日、労働局から会社に対して報告が求められます。

[2]休業手当との関係
 新型コロナ支援金は、会社の指示により休業したにも関わらず、休業手当が受けられない従業員の生活の安定および保護を図ることを目的として創設されました。一方で労働基準法では、会社の責に帰すべき事由により休業する場合に、休業手当として平均賃金の6割以上の支払いを義務付けています。
 新型コロナ支援金の支給対象となる休業が会社の責に帰すべき事由であったときには、従業員に新型コロナ支援金が支払われたとしても、休業手当を支払う義務が免除されるものではないため、新型コロナ支援金は矛盾した制度という指摘があります。そのため、厚生労働省では、まずは会社が休業手当を支払うこと等で受給できる雇用調整助成金の活用を検討するよう周知しています。
 なお、従業員が新型コロナ支援金を受け取った後に休業手当を受け取ったときは、新型コロナ支援金を返還する仕組みとなっており、新型コロナ支援金と休業手当を二重で受け取ることはできません。

 複数事業所の休業について申請する場合、複数事業所分の情報をまとめて申請する必要があります。1つの事業所分の申請をした期間については、その申請以外すべて無効になります。新型コロナ支援金の詳細については厚生労働省のホームページをご覧ください。

 

■参考リンク 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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