先日、厚生労働省から長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果が公表されました。そこで労働基準監督署による監督指導の内容と、実務上の注意点を確認します。

 

1. 法違反の状況
今回の監督指導の結果は、2019年4月から2020年3月までに、長時間労働が疑われる事業所に対し、労働基準監督署が行った監督指導の実施結果を取りまとめたものです。監督指導が実施された事業場は、2018年度の29,097事業場に対し、2019年度は32,981事業場と増加しています。
この32,981事業場に対して監督指導が実施された結果、25,770事業場(全体の78.1%)で労働基準関係法令違反がみられました。その主な法令違反は以下のとおりです。

・違法な時間外労働があったもの 15,593事業場(全体の47.3%)
・賃金不払残業があったもの 2,559事業場(全体の7.8%)
・過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの 6,419事業場(全体の19.5%)

全体の47.3%を占めた違法な時間外労働とは、労働基準法第32条違反のことを言い、具体的には36協定の届出をしないまま時間外労働をさせていたり、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働をさせていたものなどが該当します。

 

2.健康障害防止に関する指導状況
今回の32,981事業場のうち、15,338事業場(全体の46.5%)に対して、健康障害防止措置が不十分なため指導が行われました。主な指導事項として、時間外・休日労働時間の月45時間以内への削減や月80時間以内への削減が上位を占めています。
また、労働時間の適正な把握に関する指導状況としては、労働時間の把握が不適正なため指導したものが6,095事業場(全体の18.5%)で、指導事項の一番多いものが始業・終業時刻の確認・記録です。始業・終業時刻の確認・記録は、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」において「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」と示されており、このガイドラインに基づき、指導が行われています。労働時間管理を行う上での基本となることから、必ず始業・終業時刻の確認を行い、記録をしていく必要があります。

 

3.監督指導事例からみる実務上の注意点
今回の監督指導の結果の中に、監督指導事例が紹介されています。この中に、時間外・休日労働が1ヶ月当たり80時間を超えた労働者の情報を産業医に情報提供していなかったため、是正勧告が行われたというものがありますが、近年、その重要性が増しています。
2019年4月より改正労働安全衛生法が施行され、産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場は、時間外・休日労働が1ヶ月当たり80時間を超えた労働者の氏名と超えた時間に関する情報を産業医に情報提供する必要があります。産業医への情報提供が漏れないように、情報提供の流れを作りましょう。

なお、産業医への長時間労働者の情報提供は、該当する労働者がいない場合について、該当者がいないという情報を産業医に情報提供する必要があります。定例の報告フォームを用意し、いつ報告を行うか等を決め、報告漏れがないようにしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13350.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
厚生労働省「「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます」https://www.mhlw.go.jp/content/000497962.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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