2021年3月より、障害者の法定雇用率が2.3%(民間企業の場合)に引き上げられ、より積極的な障害者雇用が求められていますが、その際、障害者に対する合理的配慮の提供義務について理解しておく必要があります。 そこで今回は、この合理的配慮の提供義務と、先日公表された障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に関する調査結果をとり上げます。

 

1.合理的配慮の提供義務
合理的配慮とは、募集および採用時において、障害者と障害者でない人の均等な機会を確保するための措置、また採用後において、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置のことをいいます。
具体的にどのような措置をとるかは、企業と障害者とでよく話し合った上で決めることになりますが、その参考例としては以下のものが挙げられています。

  • 就業時間・休暇等の労働条件面での配慮が必要か
  • 障害の種類や程度に応じた職場環境の改善や安全管理がなされているか
  • 職務内容の配慮・工夫が必要か
  • 職場における指導方法やコミュニケーション方法の工夫ができないか
  • 相談員や専門家の配置または外部機関との連携方法はどうか
  • 業務遂行のために必要な教育訓練は実施されているか など


2.ハローワークへの相談内容

先日、厚生労働省より「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和2年度)」が公表されました。令和2年度にハローワークに寄せられた相談は合計246件で、前年よりわずかに減少しました。この内訳は障害者差別に関する相談が69件、合理的配慮の提供に関する相談が177件であり、この合理的配慮に関する対応事例として、以下のものが紹介されています。 

[相談内容]
(本人の家族からの相談)覚えにくいという障害特性があるにもかかわらず、業務遂行に当たって職場の社員からの配慮はなく、また、様々な暴言を受けた。
[ハローワークの助言]
ハローワークによる事業所への聴取の結果、相談内容は事実であり、本人は退職を決めたが、事業所に対し、本人への謝罪とともに、今後、障害者を雇用した際には、当人及び一緒に働いている社員双方へ状況を確認するなどの配慮を行う旨を助言し、事業所は本人及び家族に謝罪した。
[相談内容]
コロナ感染防止対策として在宅勤務となってから通院時間が取れない。また、障害に応じた配置替えを希望したい。
[ハローワークの助言]
ハローワークより事業所に対して聴取を行う中、通院可能な就業時間とされた。また、人事面では制約はあるものの障害特性に応じた対応を行いたいとの意向であり、合理的配慮の提供義務、障害に応じた配置等に関して改めて助言を行った。

上記のような対応事例により、どのような助言が会社に対して行われているかを確認し、今後の対応に活かしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省
「「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和2年度)」を公表しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19452.html

厚生労働省「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000635063.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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