1 前回まで

前回は、残業代に関する基本及び2023年4月1日施行の労働基準法改正に伴う変更点として、労働時間の意義や残業代の種類、労基法による労働時間の規制とその適用除外、労働時間の適正管理の仕組みなどについてご紹介しました。

たとえば、労基法改正によるポイントとして、中小企業においても、1か月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働について法定割増賃金率が50%になったことや、固定残業代として残業代を支払う場合には、通常の賃金と割増賃金部分が判別できなければならないことなどをお伝えしました。

そして、これら残業代を適切に労働者に支払うためには、労働時間の適切な管理が必要であり、労働時間を正確に把握する仕組みを構築しておくことが必要であることなどをお伝えしました。

本稿では、労働時間を正確に把握するために構築した時間管理の具体的な運用方法や、トラブルが発生してしまった場合の対応についてご紹介します。

2 労働時間の管理とその運用方法

⑴ 正確に打刻してもらう

せっかく適切な勤怠管理の仕組みを作っても、それが適切に運用されなければ意味がありません。適切な運用のためには、まずは、従業員の方々に勤怠管理に関する十分な説明を行うことが重要です。出勤時間より早く出社しても打刻しない、あるいは、先に打刻して残業をするなどの事態が生じないよう正確な打刻を周知徹底する必要があります。

また、意図的でなくとも、打刻忘れ等も発生するおそれがあるため、タイムレコーダー等を出入口付近に設置するなどの工夫も必要です。

⑵ 休憩しない従業員

始業終業以外にも、休憩も労働時間の管理にとっては欠かせないものです。休憩については、労基法34条で以下のとおり定められています。

労働時間 休憩
6時間を超え、8時間以下の場合 少なくとも45分
8時間を超える場合 少なくとも1時間

多くの企業では、きちんと休憩について定めていて、休憩時間を設けていると思います。もっとも、従業員の中には、休憩時間に休憩をとらず、業務を行っている方がいらっしゃいます。会社としては、このような従業員にも、適切に休憩をとってもらう必要があります。このような場合には、以下のような対応が考えられます。

従業員の休憩のための休憩室を設ける
執務室の鍵を閉めて入れないようにする
電気を消す
パソコンをシャットダウンさせる

これらの他にも、管理者自身が休憩をとる、また、従業員の能力を過度に超える業務を与えないなどの工夫も考えられます。

⑶ 賃金台帳の作成、書類の保存

企業は、タイムカード等によって把握した内容、つまり、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数などを、労働者ごとに賃金台帳に記入しなければなりません(労基法108条、同法施行規則54条)。

また、企業は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類についても3年間保存しなければなりません(労基法109条)。

3 トラブルへの対応策

⑴ トラブル発生から解決までの流れ

⑵ 証拠

労働条件に関する証拠: 就業規則(賃金規程)、雇用契約書、労働条件通知書等
労働時間に関する証拠: 賃金台帳、タイムカード、出勤簿、パソコンのログ、セキュリティキーの履歴等

⑶ 消滅時効

労基法の改正により、2020年4月1日から残業代の消滅時効の期間が、「2年」から「3年」に変わりました。

注意点は、3年の時効期間が適用されるのは、2020年4月1日以降に支払われる賃金からということです。例えば、2023年1月19日に、2020年1月19日から2023年1月19日までに発生した残業代の請求を行ったとしても、2020年1月19日から2020年3月31日までに発生した残業代請求権は、2年の消滅時効により時効が完成していることになります。そのため、会社としては、時効を援用すれば、2020年4月1日から2023年1月19日までに発生した残業代のみを支払えばよいということになります。

4 まとめ

以上、労働時間を正確に把握するために構築した時間管理の具体的な運用方法や、トラブルが発生してしまった場合の対応方法などについてご紹介させて頂きました。繰り返しになりますが、一番重要なことは、従業員の実労働時間を適切に把握する仕組みを作り、それを適切に運用して、無用なトラブルを未然に防ぐことです。

残業代請求をはじめ労務問題に関するご相談、その他企業法務、顧問契約に関するご相談については、弁護士法人いかり法律事務所までお気軽にご相談ください。

労働基準法改正と残業代 vol.1 残業代に関する基本、労働時間の適正把握の仕組みづくりについてご紹介はこちらから

 

 

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中川 宗一郎

弁護士法人いかり法律事務所

弁護士法人いかり法律事務所アソシエイト弁護士。
民事・刑事を問わず幅広い分野でトラブルを解決している。特に、労働問題に注力し、残業代請求や不当解雇・雇止めトラブルなど個人側、企業側からの労務に関わる多数の法律相談、解決実績を有する。趣味は、ドライブ。休日は家族といろいろなところに出かけるのが楽しみです。

 

 

 

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